現場で実感したビジョントレーニング

「ビジョントレーニング」という名称はまだまだ日本では浸透していませんが。
その方法や観点のエッセンスは、知らず知らずのうちに日本の教育現場でも実践されていたことなのだと私は思っています。
学習塾の現場で子どもたちを観察、指導してきたことを振り返ってみても、多くのことがビジョントレーニングと重なります。
 例えば、幼児さんが初めて鉛筆を持って書くことを覚えようとする時に、いきなりひらがなやカタカナを書くのは難しいので、プリントを使ってまっすぐ縦に線を引いたりすることから始めたりします。
こういう時に親御さんも指導者も、「書く」ことのみに意識が強くいってしまいがちです。
早く上手に書けるようになることがとても大切だと思ってしまうのです。
特に幼児さんの場合は、学校にあがるまでに、ひらがなやカタカナを一通り覚えて上手に書けるようにしといてあげたいという気持ちになるのは当然です。

大人の期待通りに少しずつでも順調に書くレベルがあがって上手になる子はよいのですが。
線を引いたり、大人からしたら簡単なことでも、なかなか習得できない子もいます。

よく起こることは、この間をはみ出さないように書こうねという課題の時です。
何度やっても、はみ出してしまう子は少なくありません。

こんな時やりがちな指導は、子どもの後ろから見ていて、うまく書けないと思ったら、子どもの後ろから手を押さえるような形で握って一緒に書くというものです。
もちろん、これでうまくいく子もいます。
力のかけ方や握り方に問題があった子の場合は、一緒に書いたことで、よいイメージを体感して、次には自分でそのイメージを思い出してできるからです。

でもその指導ではうまくいかないケースが多々あるのが現実です。

私はこの指導の問題点は、「子どもの目線や表情をみていない」ことだと思っていました。
課題は「書く」ということであっても、やろうとしている子どもは子どもなのです。
その子がどう見て、どう捉えて、どうしようとしているのか?を見ないと指導は始まらないのです。

その子に「どう見えているか?」という観点でみてあげることが大切なのです。
その観点でみていると、線を書くという課題でも、対象の図形などをうまく眼で追えていないことに気づくことがあります。
眼で捉えられていない子に、後ろから羽交い締めにして手をとって書かせても強制でしかなく、うまくはなりません。
そういう場合は、対象の図形やイラストにまず興味をもって認識するように声がけしたりします。
この動物何かな? 大きいね? という感じで。
すると子どもは少し落ち着いて対象を捉えようとするので書きやすくなります。
その後も、その子の状態に合わせて、「ここをよくみて書いてみよう」など、「見る」ことに関するアドバイスをしていきます。
急に一日で上手になることはありませんが、そういうチャレンジを続けているうちに、その子なりに見るのが上手になって、結果として書くのも上手になっていくのです。

まさにこれはビジョントレーニングと同じ観点と取り組みです。
実際にビジョントレーニングでも、眼を上手に使う練習用に、図形などをなぞるドリルなどもあります。

学習塾でも、学校の勉強でも、ビジョントレーニングでも、大切なのは、その子の見え方に注目して、根本的な課題を理解してあげることだと思います。

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