学力と能力とは?

教育の現場では、多くの先生、指導者と言われる方々が大きな愛情をもって子どもたちと向き合っておられます。

どんな子にも素敵な大人になってほしい、立派な大人になってほしい、優しい大人になってほしい。。。と様々な願いを胸に活動されているのです。

本当に素敵な大人の方々でいっぱいです。

 

そんな現場でよく耳にするのは。「あの子賢いね~」、「頭いいね~」、「賢いのにもったいないね~」、「頭はいいんだけどね~」等々のフレーズです。

教育の現場でなくても、家庭でも、どこでも、日本のあらゆる場所で聞かれたことありますよね。

 

私は以前に教育の企業に勤めていましたが、こういうフレーズが気になって仕方がなかったのです。(もちろん今もなおですが。)

 

賢い、頭がいいという言葉は、使う人によって全然ニュアンスが違うこと。

それでも共通言語として物凄い頻度で現場の議論などで使用されるので、議論が迷走しがちなこと。

結果的に、「どんな子も賢くなってほしい」、「そのために私たちはどんな指導をすべきか」という素敵な願いや話し合いも積み上がっていかないこと。

だから愛情は大きいのに、子どもたちが思うように伸びていかないこと。

 

こういうことが歯がゆくて仕方がなかったのです。

 

そこで10年くらい前から「言葉」にシビアになること、「言語化する」ことから逃げないように努力してきました。

 

例えばこの賢い、頭がいいという言葉も、もう少し整理することをおすすめしています。

それが「学力」と「能力」です。

あくまで私の定義付けですが。

 

学力は、

・現時点でどれくらいのことを知っていて、どの程度の問題を解決する(解く)ことができるかの尺度。

・主に問題を解く際の、正確性とスピードで評価される。

・例えば、算数の学力でいえば、「10までの数同士の足し算20問を、1問ミスで30秒で出来る。」というのが現時点での学力。これを一般的に計算力と呼ぶ。

一方の能力は、

・現時点だけではなく、未来の可能性も含めて、どんな力を秘めているか?の尺度。

・主には、何かに取り組む際の見る力、集中力、記憶力などで評価することができる。

・学力との関係でいえば、学力というアウトプット(結果)の下支えになっている、プロセスの力といえる。

・例えば、算数の能力でいえば、上記と同じく「10までの数同士の足し算20問」に取り組む例でいえば。

 ・1つの式を顔を動かさずにぱっと丸ごと捉える 見る力があって、

 ・20問一度も顔を上げずに(途中休憩なく)解ききる 集中力があって、

 ・20種類のランダムな問題でも指を使ったりせずに一定のリズムで答えを思い出す 記憶力が身についている。

 これが能力の部分の評価になります。

 

このように学力と能力を分けて、指導者の頭を整理して指導に臨むと、子どもたちの見え方が変わってきます。

日々の指導で大切なのは、ここでいう意味の「能力」の観点で子どもを観察する目です。

 

この観点で観ていると、その子を主語にして、どう導いてあげたら今よりも能力がアップして、結果としての学力もあがっていくのか?の道筋が見えてくると思っています。

 

例えば上記の例でいえば。この子の学力を直接あげることはできないと気付くはずです。

「もっと速く手を動かして、ほら頑張って」と直接声をかけることはできます。

でもこれはよく言えば応援で、悪くいえば強制になってしまうだけで効果があまり期待できないのです。

なぜならみんな自分なりに頑張って精一杯やっていると思っているのですから。

 

一方、能力の観点で、直接声をかけていくとしたら。

例えば「見る力」でいえば、「11つの式は見られるようになってきたから、次のステップは、23問次の式も視野に入れながら解いてみようね」と声をかけます。

「それが出来たら、もっと速くなって、15秒くらいでできるようになるかもよ!」と付け加えてあげてもよいでしょう。

1くらいの子でまだ言葉の意味、イメージが全て理解できないかもしれませんが、指導者のイメージを言葉にして伝える努力が重要です。侮るなかれ子どもはしっかり理解していってくれます。

 

能力の観点でアドバイスなどを考えると、子どもにとっての具体的な行動へのアドバイスになります。

こういう風に頑張れば(プロセス)、こういう風になるよ。(結果)と伝えることができるよになり、子どもたちも具体的なプロセスを変えてチャレンジするので、結果も変わってくるのです。

 

私がビジョントレーニングで大切にしていきたいのも、まさにこの観点です。

ビジョントレーニングで見る力、集中力、記憶力を総合的に、専門的に伸ばしていきたいと思ったからこそ、この方法を取り入れているのです。

 

先生、指導者、スポーツコーチ。肩書きや所属している団体は違っても、思いは1つ。

未来ある子どもたちに自分らしく伸びていってもらうためにも、この観点を忘れずに、こちらの見る力(観る力)などの能力も楽しんであげていきたいと思います。

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